酒ぎらい
太宰治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)勿論《もちろん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)自由|濶達《かったつ》
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二日つづけて酒を呑んだのである。おとといの晩と、きのうと、二日つづけて酒を呑んで、けさは仕事しなければならぬので早く起きて、台所へ顔を洗いに行き、ふと見ると、一升瓶が四本からになっている。二日で四升呑んだわけである。勿論《もちろん》、私ひとりで四升呑みほしたわけでは無い。おとといの晩はめずらしいお客が三人、この三鷹《みたか》の陋屋《ろうおく》にやって来ることになっていたので、私は、その二三日まえからそわそわして落ちつかなかった。一人は、W君といって、初対面の人である。いやいや、初対面では無い。お互い、十歳のころに一度、顔を見合せて、話もせず、それっきり二十年間、わかれていたのである。一つきほどまえから、私のところへ、ちょいちょい日刊工業新聞という、私などとは、とても縁の遠い新聞が送られて来て、私は、ちょっとひらいてみるのであるが、一向に読むところが無い。なぜ私に送って下さるのか、その真意を解しかねた。下
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