さえ、とても出来ませんから、お金は、お関に言いつけて、京橋の×町×丁目のカヤノアパートに住んでいる、姉上も名前だけはご存じの筈の、小説家上原二郎さんのところにとどけさせるよう、上原さんは、悪徳のひとのように世の中から評判されているが、決してそんな人ではないから、安心してお金を上原さんのところへとどけてやって下さい、そうすると、上原さんがすぐに僕に電話で知らせる事になっているのですから、必ずそのようにお願いします、僕はこんどの中毒を、ママにだけは気附かれたくないのです、ママの知らぬうちに、なんとかしてこの中毒をなおしてしまうつもりなのです、僕は、こんど姉上からお金をもらったら、それでもって薬屋への借りを全部支払って、それから塩原の別荘へでも行って、健康なからだになって帰って来るつもりなのです、本当です、薬屋の借りを全部すましたら、もう僕は、その日から麻薬を用いる事はぴったりよすつもりです、神さまに誓います、信じて下さい、ママには内緒に、お関をつかってカヤノアパートの上原さんに、たのみます、というような事が、その手紙に書かれていて、私はその指図《さしず》どおりに、お関さんにお金を持たせて、
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