くないと考え、姉さんには少し工合《ぐあ》いが悪かったけど、とにかくここへ一緒にやって来てみたら、姉さんは東京のお友達のところへ出掛け、その時ふと、僕は死ぬなら今だ、と思ったのです。
僕は昔から、西片町のあの家の奧の座敷で死にたいと思っていました。街路や原っぱで死んで、弥次馬《やじうま》たちに死骸《しがい》をいじくり廻されるのは、何としても、いやだったんです。けれども、西片町のあの家は人手に渡り、いまではやはりこの山荘で死ぬよりほかは無かろうと思っていたのですが、でも、僕の自殺をさいしょに発見するのは姉さんで、そうして姉さんは、その時どんなに驚愕《きょうがく》し恐怖するだろうと思えば、姉さんと二人きりの夜に自殺するのは気が重くて、とても出来そうも無かったのです。
それが、まあ、何というチャンス。姉さんがいなくて、そのかわり、頗《すこぶ》る鈍物のダンサアが、僕の自殺の発見者になってくれる。
昨夜、ふたりでお酒を飲み、女のひとを二階の洋間に寝かせ、僕ひとりママの亡くなった下のお座敷に蒲団《ふとん》をひいて、そうして、このみじめな手記にとりかかりました。
姉さん。
僕には、希望の地盤
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