だてれて、あいまいに首肯していましたが、しかし、僕も死ぬに当って、一言、抗議めいた事を言って置きたい。
 姉さん。
 信じて下さい。
 僕は、遊んでも少しも楽しくなかった[#「楽しくなかった」に傍点]のです。快楽のイムポテンツなのかも知れません。僕はただ、貴族という自身の影法師から離れたくて、狂い、遊び、荒《すさ》んでいました。
 姉さん。
 いったい、僕たちに罪があるのでしょうか。貴族に生れたのは、僕たちの罪[#「僕たちの罪」に傍点]でしょうか。ただ、その家に生れただけに、僕たちは、永遠に、たとえばユダの身内の者みたいに、恐縮し、謝罪し、はにかんで生きていなければならない。
 僕は、もっと早く死ぬべきだった。しかし、たった一つ、ママの愛情。それを思うと、死ねなかった。人間は、自由に生きる権利を持っていると同時に、いつでも勝手に死ねる権利も持っているのだけれども、しかし、「母」の生きているあいだは、その死の権利は留保されなければならないと僕は考えているんです。それは同時に、「母」をも殺してしまう事になるのですから。
 いまはもう、僕が死んでも、からだを悪くするほど悲しむひともいないし、
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