いものにしました。
この不思議な言葉は、民主々義とも、またマルキシズムとも、全然無関係のものなのです。それは、かならず、酒場に於《お》いて醜男《ぶおとこ》が美男子に向って投げつけた言葉です。ただの、イライラです。嫉妬《しっと》です。思想でも何でも、ありゃしないんです。
けれども、その酒場のやきもちの怒声が、へんに思想めいた顔つきをして民衆のあいだを練り歩き、民主々義ともマルキシズムとも全然、無関係の言葉の筈なのに、いつのまにやら、その政治思想や経済思想にからみつき、奇妙に下劣なあんばいにしてしまったのです。メフィストだって、こんな無茶な放言を、思想とすりかえるなんて芸当は、さすがに良心に恥じて[#「良心に恥じて」に傍点]、躊躇《ちゅうちょ》したかも知れません。
人間は、みな、同じものだ。
なんという卑屈な言葉であろう。人をいやしめると同時に、みずからをもいやしめ、何のプライドも無く、あらゆる努力を放棄せしめるような言葉。マルキシズムは、働く者の優位を主張する。同じものだ、などとは言わぬ。民主々義は、個人の尊厳を主張する。同じものだ、などとは言わぬ。ただ、牛太郎だけがそれを言う。
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