の、頭の禿《は》げた小柄《こがら》なおじさんが、派手なパジャマを着て、へんな、はにかむような笑顔で私たちを迎えた。
「たのむ」
と上原さんは一こと言って、マントも脱がずにさっさと家の中へはいって、
「アトリエは、寒くていけねえ。二階を借りるぜ。おいで」
私の手をとって、廊下をとおり突き当りの階段をのぼって、暗いお座敷にはいり、部屋の隅《すみ》のスイッチをパチとひねった。
「お料理屋のお部屋みたいね」
「うん、成金趣味さ。でも、あんなヘボ画《え》かきにはもったいない。悪運が強くて罹災《りさい》も、しやがらねえ。利用せざるべからずさ。さあ、寝よう、寝よう」
ご自分のお家みたいに、勝手に押入れをあけてお蒲団《ふとん》を出して敷いて、
「ここへ寝給《ねたま》え。僕は帰る。あしたの朝、迎えに来ます。便所は、階段を降りて、すぐ右だ」
だだだだと階段からころげ落ちるように騒々しく下へ降りて行って、それっきり、しんとなった。
私はまたスイッチをひねって、電燈を消し、お父上の外国土産の生地で作ったビロードのコートを脱ぎ、帯だけほどいて着物のままでお床へはいった。疲れている上に、お酒を飲んだせい
前へ
次へ
全193ページ中167ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
太宰 治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング