合い切れない小生意気なところを見せる。僕は田舎の百姓の息子でね、こんな小川の傍をとおると必ず、子供のころ、故郷の小川で鮒《ふな》を釣った事や、めだかを掬《すく》った事を思い出してたまらない気持になる」
暗闇《くらやみ》の底で幽《かす》かに音立てて流れている小川に、沿った路《みち》を私たちは歩いていた。
「けれども、君たち貴族は、そんな僕たちの感傷を絶対に理解できないばかりか、軽蔑《けいべつ》している。」
「ツルゲーネフは?」
「あいつは貴族だ。だからいやなんだ」
「でも、猟人日記、……」
「うん、あれだけは、ちょっとうまいね」
「あれは、農村生活の感傷、……」
「あの野郎は田舎貴族、というところで妥協しようか」
「私もいまでは田舎者ですわ。畑を作っていますのよ。田舎の貧乏人」
「今でも、僕をすきなのかい」
乱暴な口調であった。
「僕の赤ちゃんが欲しいのかい」
私は答えなかった。
岩が落ちて来るような勢いでそのひとの顔が近づき、遮二無二《しゃにむに》私はキスされた。性慾《せいよく》のにおいのするキスだった。私はそれを受けながら、涙を流した。屈辱の、くやし涙に似ているにがい涙であっ
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