うにすべすべして、薄い唇《くちびる》が幽かにゆがんで微笑《ほほえ》みを含んでいるようにも見えて、生きているお母さまより、なまめかしかった。私は、ピエタのマリヤに似ていると思った。

     六

 戦闘、開始。
 いつまでも、悲しみに沈んでもおられなかった。私には、是非とも、戦いとらなければならぬものがあった。新しい倫理。いいえ、そう言っても偽善めく。恋。それだけだ。ローザが新しい経済学にたよらなければ生きておられなかったように、私はいま、恋一つにすがらなければ、生きて行けないのだ。イエスが、この世の宗教家、道徳家、学者、権威者の偽善をあばき、神の真の愛情というものを少しも躊躇《ちゅうちょ》するところなくありのままに人々に告げあらわさんがために、その十二|弟子《でし》をも諸方に派遣なさろうとするに当って、弟子たちに教え聞かせたお言葉は、私のこの場合にも全然、無関係でないように思われた。
「帯《おび》のなかに金銀《きんぎん》または銭《ぜに》を持《も》つな。旅《たび》の嚢《ふくろ》も、二枚《にまい》の下衣《したぎ》も、鞋《くつ》も、杖《つえ》も持《も》つな。視《み》よ、我《われ》なんじら
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