見ると、沓脱石の上に蛇が、秋の陽《ひ》を浴びて長くのびていた。私は、くらくらと目まいした。
私はお前を知っている。お前はあの時から見ると、すこし大きくなって老《ふ》けているけど、でも、私のために卵を焼かれたあの女蛇なのね。お前の復讐《ふくしゅう》は、もう私よく思い知ったから、あちらへお行き。さっさと、向うへ行ってお呉《く》れ。
と心の中で念じて、その蛇を見つめていたが、いっかな蛇は、動こうとしなかった。私はなぜだか、看護婦さんに、その蛇を見られたくなかった。トンと強く足踏みして、
「いませんわ、お母さま。夢なんて、あてになりませんわよ」
とわざと必要以上の大声で言って、ちらと沓脱石のほうを見ると、蛇は、やっと、からだを動かし、だらだらと石から垂れ落ちて行った。
もうだめだ。だめなのだと、その蛇を見て、あきらめが、はじめて私の心の底に湧《わ》いて出た。お父上のお亡くなりになる時にも、枕もとに黒い小さい蛇がいたというし、またあの時に、お庭の木という木に蛇がからみついていたのを、私は見た。
お母さまはお床の上に起き直るお元気もなくなったようで、いつもうつらうつらしていらして、もうお
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