くなって、寒気《さむけ》がして、それから熱が出るの」
 外は、もう、暗くなっていて、雨はやんだようだが、風が吹き出していた。灯をつけて、食堂へ行こうとすると、お母さまが、
「まぶしいから、つけないで」
 とおっしゃった。
「暗いところで、じっと寝ていらっしゃるの、おいやでしょう」
 と立ったまま、おたずねすると、
「眼をつぶって寝ているのだから、同じことよ。ちっとも、さびしくない。かえって、まぶしいのが、いやなの。これから、ずっと、お座敷の灯はつけないでね」
 とおっしゃった。
 私には、それもまた不吉な感じで、黙ってお座敷の灯を消して、隣りの間へ行き、隣りの間のスタンドに灯をつけ、たまらなく侘《わ》びしくなって、いそいで食堂へ行き、罐詰の鮭《さけ》を冷たいごはんにのせて食べたら、ぽろぽろと涙が出た。
 風は夜になっていよいよ強く吹き、九時頃から雨もまじり、本当の嵐《あらし》になった。二、三日前に巻き上げた縁先の簾《すだれ》が、ばたんばたんと音をたてて、私はお座敷の隣りの間で、ローザルクセンブルグの「経済学入門」を奇妙な興奮を覚えながら読んでいた。これは私が、こないだお二階の直治の部屋
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