を遣《つかわ》すは、羊《ひつじ》を豺狼《おおかみ》のなかに入《い》るるが如《ごと》し。この故《ゆえ》に蛇《へび》のごとく慧《さと》く、鴿《はと》のごとく素直《すなお》なれ。人々《ひとびと》に心《こころ》せよ、それは汝《なんじ》らを衆議所《しゅうぎしょ》に付《わた》し、会堂《かいどう》にて鞭《むちう》たん。また汝等《なんじら》わが故《ゆえ》によりて、司《つかさ》たち王《おう》たちの前《まえ》に曳《ひ》かれん。かれら汝《なんじ》らを付《わた》さば、如何《いかに》なにを言《い》わんと思《おも》い煩《わずら》うな、言《い》うべき事《こと》は、その時《とき》さずけられるべし。これ言《い》うものは汝等《なんじら》にあらず、其《そ》の中《うち》にありて言《い》いたまう汝《なんじ》らの父《ちち》の霊《れい》なり。又《また》なんじら我《わ》が名《な》のために凡《すべ》ての人《ひと》に憎《にく》まれん。されど終《おわり》まで耐《た》え忍《しの》ぶものは救《すく》わるべし。この町《まち》にて、責《せ》めらるる時《とき》は、かの町《まち》に逃《のが》れよ。誠《まこと》に汝《なんじ》らに告《つ》ぐ、なんじらイスラエルの町々《まちまち》を巡《めぐ》り尽《つく》さぬうちに人《ひと》の子《こ》は来《きた》るべし。
身《み》を殺《ころ》して霊魂《たましい》をころし得《え》ぬ者《もの》どもを懼《おそ》るな、身《み》と霊魂《たましい》とをゲヘナにて滅《ほろぼ》し得《う》る者《もの》をおそれよ。われ地《ち》に平和《へいわ》を投《とう》ぜんために来《きた》れりと思《おも》うな、平和《へいわ》にあらず、反《かえ》って剣《つるぎ》を投《とう》ぜん為《ため》に来《きた》れり。それ我《わ》が来《きた》れるは人《ひと》をその父《ちち》より、娘《むすめ》をその母《はは》より、嫁《よめ》をその姑※[#「女+章」、第4水準2−5−75]《しゅうとめ》より分《わか》たん為《ため》なり。人《ひと》の仇《あだ》は、その家《いえ》の者《もの》なるべし。我《われ》よりも父《ちち》または母《はは》を愛《あい》する者《もの》は、我《われ》に相応《ふさわ》しからず。我《われ》よりも息子《むすこ》または娘《むすめ》を愛《あい》する者《もの》は、我《われ》に相応《ふさわ》しからず。又《また》おのが十字架《じゅうじか》をとりて我《われ》に従《
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