るのに、ちっともそんなことに気がつかないで、ただ、あなたを幸福にできるとか、できないとか言っては、お金持ちのふりをしたり、それから、――おかしいわ、自信たっぷりで、へんなことするんだもの。女が肉体だけのものだなんて、だれが一体、そんなばかなことを男に教えたのかしら。自然に愛情が、それを求めたら、それに従えばいいのだし、それを急に、顔いろを変えたり、色んなどぎつい芝居をして、ばかばかしい。女は肉体のことなんか、そんなに重要に思っていないわ。ねえ、数枝なんかだって、そうなんだろう? いくらひとりでお金をためたって、男と遊んだって、いつでも淋しそうじゃないか。あたし、男のひと皆に教えてやりたい。女にほんとうに好かれたいなら、ほんとうに女を愛しているなら、ほんの身のまわりのことでもいいから、何か用事を言いつけて下さい。権威を以て、お言いつけ下さい、って。地位や名聞を得なくたって、お金持ちにならなくたって、男そのものが、立派に尊いのだから、ありのままの御身に、その身ひとつに、ちゃんと自信を持っていてくれれば、女は、どんなにうれしいか。お互い、ちょっとの思いちがいで、男も女も、ずいぶん狂ってしまっ
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