家庭の幸福
太宰治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)所謂《いわゆる》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)倹約|吝嗇《りんしょく》の私にとって
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)大過無し[#「大過無し」に傍点]
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「官僚が悪い」という言葉は、所謂《いわゆる》「清く明るくほがらかに」などという言葉と同様に、いかにも間が抜けて陳腐で、馬鹿らしくさえ感ぜられて、私には「官僚」という種属の正体はどんなものなのか、また、それが、どんな具合いに悪いのか、どうも、色あざやかには実感せられなかったのである。問題外、関心無し、そんな気持に近かった。つまり、役人は威張る、それだけの事なのではなかろうかとさえ思っていた。しかし、民衆だって、ずるくて汚くて慾が深くて、裏切って、ろくでも無いのが多いのだから、謂《い》わばアイコとでも申すべきで、むしろ役人のほうは、その大半、幼にして学を好み、長ずるに及んで立志出郷、もっぱら六法全書の糞《くそ》暗記に努め、質素倹約、友人にケチと言われても馬耳東風、祖先を敬するの念厚く、亡父
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