来た。
「一同満足せり。ひばりの労を多とす。孔雀は、私こと、と改名すべし。」
かっぽれは、その綽名の提案にすぐ反対を表明した。「私こと」という綽名をつけるのは、いかになんでも残酷すぎるというのである。
「むごいじゃねえか。あれでも一生懸命で言ったんだぜ。純情を汲み取ってくれって言われたじゃねえか。空飛ぶ鳥を見よ、というわけのものなんだ。一視同仁じゃねえか。人をのろわば穴二つというわけのものになるんだ。おれは絶対反対だ。孔雀がおしろいを落して黒い地肌《じはだ》を見せるってわけのものだから、これは、カラスとでも改めたらいいんだ。」
このほうが、かえって辛辣《しんらつ》で残酷だ。なんにもならない。
「孔雀が簡素になったんだから、孔雀の上の字を一つ省略して雀《すずめ》とでもするさ。」越後はそう言って、うふふと笑った。
雀も、すこし理に落ちて面白くないが、まあ長老の意見だし、回覧板に、「私こと」は酷に過ぎたり、「雀」など穏当ならん、と僕が書き込んで、かっぽれに持たせてやった。「白鳥の間」には、ほうぼうの部屋から綽名の提案が殺到していたそうであるが、結局、「私こと」に落ちつくかも知れない。ど
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