にへんな誤解をされない程度の簡素なよそおいで、塾生諸君にお目にかかるそうでございます。なお、次に、助手の牧田さんが、一言、塾生諸君におわび申し上げたいそうで、どうか牧田さんのこの純情を汲《く》んでやって下さい。」
 牧田さんというのは、れいの孔雀だ。孔雀は、小さいせきばらいをして、
「私こと、」と言った。
お隣りの部屋から、どっと笑声が起った。僕たちの部屋でも、みんなにやにや笑っている。
「私こと、」こおろぎの鳴くような細い可憐《かれん》な声だ。「時節も場所がらも、わきまえませず、また、最年長者でもありますのに、ふつつかにて、残念な事をいたしました。深くおわび申し上げます。今後も、何とぞ、よろしくお導き下さいまし。」
「よし、よし。」という声が隣りの部屋から聞こえた。
「可哀《かわい》そうに。」とかっぽれは、しんみり言って僕のほうを横眼で見た。僕は、少しつらかった。
「最後に、」と事務の人が引きとり、「これは助手さんたち一同からのお願いでありますが、牧田さんの従来の綽名は、即刻改正していただきたい、との事でございます。きょうの臨時放送は、これだけです。」
「白鳥の間」から、すぐ回覧板が
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