たようだった。
「よろしいですね。ありがとう。この回覧板は、晩までお借り致します。」僕は素早く部屋を出た。これでいいのだ。むずかしい事は無いんだ。あとは竹さんにたのめばいい。
部屋へ帰って来たら、かっぽれは、
「だめだなあ、ひばりは。おれは、廊下へ出て聞いていたんだ。あんな事じゃ、なんにもならんじゃねえか。キリスト精神と君子豹変のわけでも、どんと一発言ってやればよかったんだ。自由と束縛! と言ってやってもいいんだ。やつら、道理を知らねえのだから、すじみちの立った事を言ってやるのが一ばんなのだ。自由思想は空気と鳩《はと》だ、となぜ言ってやらねえのかな。」としきりに口惜《くや》しがっていた。
「晩まで僕に、まかせて置いて下さい。」とだけ言って僕は、自分のベッドに寝ころがった。
さすがに少し疲れたのである。
「まかせろ、まかせろ。」と越後が寝たまま威厳のある声で言ったので、かっぽれもそれ以上は言わずに、しぶしぶ寝てしまった様子である。
僕には別に、計画なんか無いんだ。ただ、この回覧板を竹さんに見せると、竹さんは、いいようにしてくれるだろうと楽観していたのである。二時の屈伸鍛錬のときに、
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