はかなお追従《ついしょう》ばかり言っている。
「でも、意外だわ。こんな手紙。」マア坊は仔細《しさい》らしく首をひねり、便箋《びんせん》をひらいて眺めた。
「うん、僕もちょっと意外に思った。」僕の場合、あんまり下手で意外だったのだ。
「まったく、意外だわ。」マア坊にとっては、いかにも、重大な事らしい。
「君のほうからも、手紙を出したんだろう。」またもや要らない事を言ってしまって、ひやりとした。
「出したわ。」けろりとしている。
 僕は急に面白くなくなった。
「それじゃ君が誘惑したのだ。君は不良少女みたいだ。そんなのを、オタンチンっていうのだ。ミイチャンハアチャンともいうし、チンピラともいうし、また、トッピンシャンともいうんだ。けしからんじゃないか、君は。」と思い切り罵倒《ばとう》してやったが、マア坊はこんどは怒るどころか、げらげら笑い出した。
「まじめに聞いてくれよ。殊《こと》に、つくしには奥さんがある。笑い事じゃないんだぜ。」
「だから、奥さんにお礼状を出したの。つくしが道場を出る時、あたしがまちの駅まで送って行って、その時に奥さんから白足袋を二足いただいたから、あたし、奥さんに礼状を
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