と軽く言って、お辞儀するように上体を前にこごめて歩きかけた。
「手紙を持って来たよ。」僕は手紙を差出した。
「ありがとう。」とちっとも笑わずに受取って、「ひばりも、やっぱり、だめね。」
「なぜ、だめなんだ。」僕のほうが受け身になった。
「あたしを、そんな女だと思っていたのね。ひばり、」と顔を蒼《あお》くして僕の顔をまっすぐに見て、「恥ずかしくない?」
「恥ずかしい。」僕は、あっさりかぶとを脱いだ。「やいたんだ。」
マア坊は、金歯を光らせて笑った。
3
「僕、その手紙を読んだよ。」大いにとっちめてやるつもりであったのだが、竹さんからつまらぬ藤娘なんてお土産をもらって、出鼻をくじかれ、マア坊に対してうしろめたいものさえ感じて意気があがらず、憂鬱《ゆううつ》にちかい気持でこの洗面所に来てみると、マア坊が、あんまりなまめかしかったので、男子として最も恥ずべきやきもちの心が起り、つい、あらぬ事を口走って、ただちにマア坊に糺明《きゅうめい》せられ、今は、ほとんど駄目《だめ》になった。
「全部読んだよ。面白かった。つくしって、いいひとだね。僕は、好きになっちゃった。」心にもない、あさ
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