の剽竊者を指していふときにも使用されるやうだが、それでもかまはないか、と私が言つたら、馬場は即座に、いよいよ面白いと答へた。Le Pirate, ――雜誌の名はまづきまつた。マラルメや※[#濁点付き片仮名ヱ、1−7−84]ルレエヌの關係してゐた La Basoche, ※[#濁点付き片仮名ヱ、1−7−84]ルハアレン一派の La Jeune Belgique, そのほか La Semaine, Le Type. いづれも異國の藝苑に咲いた眞紅の薔薇。むかしの若き藝術家たちが世界に呼びかけた機關雜誌。ああ、われらもまた。暑中休暇がすんであたふたと上京したら、馬場の海賊熱はいよいよあがつてゐて、やがて私にもそのまま感染し、ふたり寄ると觸ると Le Pirate についての、はなやかな空想を、いやいや、具體的なプランについて語り合つたのである。春と夏と秋と冬と一年に四囘づつ發行のこと。菊倍判六十頁。全部アート紙。クラブ員は海賊のユニフオオムを一着すること。胸には必ず季節の花を。クラブ員相互の合言葉。――一切誓ふな。幸福とは? 審判する勿れ。ナポリを見てから死ね! 等々。仲間はかならず二十代の
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