ゆうべ徹夜で計算したところに依ると、三百圓で、素晴らしい本が出來る。それくらゐなら、僕ひとりでも、どうにかできさうである。君は詩を書いてポオル・フオオルに讀ませたらよい。僕はいま海賊の歌といふ四樂章からなる交響曲を考へてゐる。できあがつたら、この雜誌に發表し、どうにかしてラヴエルを狼狽させてやらうと思つてゐる。くりかへして言ふが、實現は困難でない。金さへあれば、できる。實現不可能の理由としては、何があるか。君もはなやかな空想でせいぜい胸をふくらませて置いたはうがよい。どうだ。(手紙といふものは、なぜおしまひに健康を祈らなければいけないのか。頭はわるし、文章はまづく、話術が下手くそでも、手紙だけは巧い男といふ怪談がこの世の中にある。)ところで僕は、手紙上手であるか。それとも手紙下手であるか。さよなら。
これは別なことだが、いまちよつと胸に浮んだから書いておく。古い質問、「知ることは幸福であるか。」
佐野次郎左衞門樣、[#地から3字上げ]馬場數馬。
二 海賊
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ナポリを見てから死ね!
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Pirate といふ言葉は、著作物
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