てお礼に差出すと、それがまた気にいらないらしく、都会の成金どもが闇値段を吊《つ》り上げて田舎の平和を乱すなんておっしゃる。それでいてお金を絶対に取らないのかというと、どうしてどうして、どんなに差上げても多すぎるとは言わない。お金をずいぶん欲しがっているくせに、わざとぞんざいに扱ってみせて、こんなものは紙屑《かみくず》同然だとおっしゃる、罰《ばち》が当りますよ、どんなお札にだって菊の御紋が付いているんですよ、でもまあ、そうしてお金だけで事をすましてくれるお百姓さんはまだいいほうで、たいていは、お金とそれから品物を望みます。焼け出されのほとんど着のみ着のままの私たちに向って、お前さまのそのモンペでも、などと平気で言うお百姓さんもあるのですからね、ぞっとしますよ、そんなにまでして私たちからいろいろなものを取り上げながら、あいつらも今はお金のあるにまかせて、いい気になって札びらを切って寝食いをしているけれども、もうすぐお金も無くなるだろうし、そうなった時には一体どうする気だろう、あさはかなものだ、なんて私たちをいい笑い物にしているのです。私たちは以前あの人たちに何か悪い事でもして来たのでしょう
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