てこの男も「創造しつつ痛ましく勇ましく没落して行くにちがいない。」とツァラツストラがのこのこ出て来ていらざる註釈を一こと附け加えた。
或る実験報告
人は人に影響を与えることもできず、また、人から影響を受けることもできない。
老年
ひとにすすめられて、「花伝書」を読む。「三十四五歳。このころの能、さかりのきはめなり。ここにて、この条条を極めさとりて、かんのう(堪能)になれば、定めて天下《てんが》にゆるされ、めいぼう(名望)を得つべし。若《もし》、この時分に、天下のゆるされも不足に、めいぼうも思ふほどなくは、如何《いか》なる上手なりとも、未《いまだ》まことの花を極めぬして(仕手)と知るべし。もし極めずは、四十より能はさがるべし。それ後の証拠なるべし。さる程に、あがるは三十四五までの比《ころ》、さがるは四十以来なり。返返《かえすがえす》この比天下のゆるされを得ずは能を極めたりとおもふべからず。云々《うんぬん》。」またいう。「四十四五。この比よりの手だて、大方かはるべし。たとひ、天下にゆるされ、能に得法したりとも、それにつけても、よき脇のして(仕手)を持つべし。
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