として、石にかじりついても、生きのびて行くやも知れぬ。秀才、はざま貫一、勉学を廃止して、ゆたかな金貸し業をこころざしたというテエマは、これは今のかずかずの新聞小説よりも、いっそう切実なる世の中の断面を見せて呉《く》れる。
私、いま、自らすすんで、君がかなしき藁半紙《わらばんし》に、わが心臓つかみ出したる詩を、しるさむ。私、めったの人には断じて見せなかった未発表の大事の詩一篇。
附言する。われ藁半紙のゆえにのみしるす也と思うな。原稿用紙二枚に走り書きしたる君のお手紙を読み、謂《い》わば、屑籠《くずかご》の中の蓮《はちす》を、確実に感じたからである。君もまたクライストのくるしみを苦しみ、凋落《ちょうらく》のボオドレエルの姿態に胸を焼き、焦がれ、たしかに私と甲乙なき一二の佳品かきたることあるべしと推量したからである。ただし私、書くこと、この度一回に限る。私どんなひとでも、馴れ合うことは、いやだ。
因果
射的を
好む
頭でっかちの
弟。
兄は、いつでも、生命を、あげる。
葦の自戒
その一。ただ、世の中にのみ眼をむけよ。自然の風景に惑溺《わくでき》して
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