のが、お前の宿命なのかもしれない。何か狭い器に監禁せられて、ただわずかのたまり水によって、命の衰え行くのを警告する狂わんばかりの渇《かわき》を止めているのもお前の運命なのかもしれぬ。
花よ、もし御門《みかど》の国にいるならば、鋏《はさみ》と小鋸《このこぎり》に身を固めた恐ろしい人にいつか会うかもしれぬ。その人はみずから「生花の宗匠」と称している。彼は医者の権利を要求する。だから、自然彼がきらいになるだろう。というのは、医者というものはその犠牲になった人のわずらいをいつも長びかせようとする者だからね。彼はお前たちを切ってかがめゆがめて、彼の勝手な考えでお前たちの取るべき姿勢をきめて、途方もない変な姿にするだろう。もみ療治をする者のようにお前たちの筋肉を曲げ、骨を違わせるだろう。出血を止めるために灼熱《しゃくねつ》した炭でお前たちを焦がしたり、循環を助けるためにからだの中へ針金をさし込むこともあろう。塩、酢、明礬《みょうばん》、時には硫酸を食事に与えることもあろう。お前たちは今にも気絶しそうな時に、煮え湯を足に注がれることもあろう。彼の治療を受けない場合に比べると、二週間以上も長くお前た
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