茶の本
訳者のことば
村岡博
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)亡羊《ぼうよう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ]村岡博
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この『茶の本』はかつて『亡羊《ぼうよう》』に載せた訳に多少筆を加えまとめてこの文庫に収めたものである。『特殊の風格を備えたる先生の英文は翻訳をもってしては到底その真味を伝うる能《あた》わざるとともにその本旨にももとるものあるべきをおそれ……』その抄訳《しょうやく》さえも天心全集に収められなかったものを、私ごとき者が全訳を企てたのは全く叛逆《はんぎゃく》である。しかし、日本人でありながらことに英文に親しまない人々の中にはこの名著を知らない人も多かろう、そういう人々にほんの『縦横の糸目』だけでも伝えたいと思ってこの叛逆をあえてしたのである。翻訳はよくいったところでただ『錦《にしき》の裏』を見せるに過ぎないもの、色彩意匠の精妙は到底伝えられないものである。それにこのような生硬不熟な、邦文の体をなさない訳文をもってしてはせっかくの名著の名をけがさんことをおそれている。
これを岩波文庫
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