さっきとかげの奥さんが提出なすった問題に、ちっとも触れなかったじゃありませんか。奥さんは、『世界とは何でしょう』とお尋ねだったのですよ。だのに自分のお団子の話をするなんて、それじゃむしろ失礼と言うもんじゃありませんか。世界とは――世界というものは、僕に言わせると、こうして僕らのために若草があり、太陽があり、そよそよ風がある以上、すこぶる結構なものだと思いますね。それにまた実に大きなものですよ! あんたなどは、こうしてこの木とあの木のあいだを天地として暮らしておられるから、世界がどれほど大きなものかということについては、とても理解が行くはずはありませんよ。僕はよく耕地へ行って見ますがね、そこでときどき、思いっきり高くとびあがって見るんです。そして正直な話が、とても高いとこまでとびあがれるんですがね、その高みから見渡すと、つくづく世界には際限がないと思いますねえ。」
「まったくその通りじゃ」と、分別顔で栗毛の馬が相槌《あいづち》をうちました、「とはいうもののお前さんたちはみんな、わしがこの歳《とし》までに見て来たものの、百に一つも見られはせんのじゃよ。お気の毒じゃがお前さんたちには、一露里
前へ 次へ
全13ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ガールシン フセヴォロド・ミハイロヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング