よく働く者がほかにありますか? そもそもだれが日がな一日、息をつく暇もなしに、あのように重い団子を――すなわち、やがて生まるべき私同様のくそ虫たちが、すくすくと生長しうるようにとの大目的をもって、くそを材料に私がかくも手ぎわよく作りあげた団子を、せっせところがしているでありましょうか? しかもその代わり私は、やがてこの世に新しいくそ虫が生まれ出るとき、『しかり、わが輩はなしうるところのものを、またなすべかりしところのものを、ことごとくなしとげたのだ』と私が言うであろうように、かくも平らかなる良心をもって、また一点の曇りなき衷情をもって、言い切れる者が他にあろうとも思わないのであります。諸君、労働とは実にかくのごときものであります!」
「おっと兄弟、そう労働労働と大きな口をめったにきいてはもらいますまいぜ!」と、ちょうどくそ虫の演説のとき、丸太ほどもある枯れ草の茎の切れっぱしを、暑さにもめげず引きずっていた一匹の蟻《あり》が、そう申しました。蟻はちょっと立ち止まって、四本の後脚で地面にすわり、やつれた顔にしたたる汗を、二本の前脚でふきました。――「僕だって、そら、この通り労働はするんだぜ
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