もならぬが不思議、或は射《や》られた時は一ヵ所の負傷であったが、此処へ這込《はいこん》でから復《ま》た一発|喰《く》ったのかな。
蒼味《あおみ》を帯びた薄明《うすあかり》が幾個《いくつ》ともなく汚点《しみ》のように地《じ》を這《は》って、大きな星は薄くなる、小さいのは全く消えて了う。ほ、月の出汐《でしお》だ。これが家《うち》であったら、さぞなア、好かろうになアと……
妙な声がする。宛《あだか》も人の唸《うな》るような……いや唸《うな》るのだ。誰か同じく脚《あし》に傷《て》を負って、若《もし》くは腹に弾丸《たま》を有《も》って、置去《おきざり》の憂目《うきめ》を見ている奴が其処らに居《お》るのではあるまいか。唸声《うなりごえ》は顕然《まざまざ》と近くにするが近処《あたり》に人が居そうにもない。はッ、これはしたり、何の事《こッ》た、おれおれ、この俺が唸《うな》るのだ。微かな情ない声が出おるわい。そんなに痛いのかしら。痛いには違いあるまいが、頭がただもう茫《ぼう》と無感覚《ばか》になっているから、それで分らぬのだろう。また横臥《ねころん》で夢になって了え。眠《ね》ること眠ること……が、も
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