丁度|先刻《さっき》しがた眼を覚して例の小草《おぐさ》を倒《さかしま》に這降《はいおり》る蟻を視た時、起揚《おきあが》ろうとして仰向《あおむけ》に倒《こ》けて、伏臥《うつぶし》にはならなかったから、勝手が好《い》い。それで此星も、成程な。
やっとこなと起かけてみたが、何分両脚の痛手《いたで》だから、なかなか起られぬ。到底《とて》も無益《むだ》だとグタリとなること二三度あって、さて辛《かろ》うじて半身起上ったが、や、その痛いこと、覚えず泪《なみだ》ぐんだくらい。
と視ると頭の上は薄暗い空の一角。大きな星一ツに小さいのが三《み》ツ四《よ》ツきらきらとして、周囲《まわり》には何か黒いものが矗々《すっく》と立っている。これは即ち山査子《さんざし》の灌木。俺は灌木の中に居るのだ。さてこそ置去り……
と思うと、慄然《ぞっ》として、頭髪《かみのけ》が弥竪《よだ》ったよ。しかし待てよ、畑《はた》で射《や》られたのにしては、この灌木の中に居るのが怪《おか》しい。してみればこれは傷の痛さに夢中で此処へ這込《はいこん》だに違いないが、それにしても其時は此処まで這込《はいこ》み得て、今は身動《みうごき》
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