の骸骨が軍服を着けて、紐釦《ぼたん》ばかりを光らせている所を見たら、覚えず胴震が出て心中で嘆息を漏した、「嗚呼《ああ》戦争とは――これだ、これが即ち其姿だ」と。
 相変らずの油照《あぶらでり》、手も顔も既《も》うひりひりする。残少なの水も一滴残さず飲干して了った。渇《かわ》いて渇いて耐えられぬので、一滴《ひとしずく》甞める積《つもり》で、おもわずガブリと皆飲んだのだ。嗚呼《ああ》彼《あ》の騎兵がツイ側《そば》を通る時、何故《なぜ》おれは声を立てて呼ばなかったろう? よし彼《あれ》が敵であったにしろ、まだ其方が勝《まし》であったものを。なんの高が一二時間|責《せめ》さいなまれるまでの事だ。それをこうして居れば未だ幾日《いくか》ごろごろして苦しむことか知れぬ。それにつけても憶出《おもいだ》すは母の事。こうと知ったら、定めし白髪《しらが》を引※[#「てへん+劣」、第3水準1−84−77]《ひきむし》って、頭を壁へ打付けて、おれを産んだ日を悪日《あくび》と咒《のろ》って、人の子を苦しめに、戦争なんぞを発明した此世界をさぞ罵《ののし》る事《こッ》たろうなア!
 だが、母もマリヤもおれがこう※[#
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