れが見付かりさえすれば助かるのだ。事に寄ると、骨は避《よ》けているかも知れんから、そうすれば必ず治る。国へ帰って母にも逢える、マ、マ、マリヤにも逢える……
 ああ国へはこうと知らせたくないな。一思《ひとおもい》に死だと思わせて置きたいな。そうでもない偶然《ひょっと》おれが三日も四日も藻掻《もがい》ていたと知れたら……
 眼が眩《ま》う。隣歩きで全然《すっかり》力が脱けた。それにこの恐《おッそ》ろしい臭気は! 随分と土気色になったなア! ……これで明日《あす》明後日《あさって》となったら――ええ思遣られる。今だって些《ちっ》ともこうしていたくはないけれど、こう草臥《くたびれ》ては退《の》くにも退《の》かれぬ。少し休息したらまた旧処《もと》へ戻ろう。幸いと風を後《うしろ》にしているから、臭気は前方《むこう》へ持って行こうというもの。
 全然《すっかり》力が脱けて了った。太陽は手や顔へ照付ける。何か被《かぶ》りたくも被《かぶ》る物はなし。責《せめ》て早く夜になとなれ。こうだによってと、これで二晩目かな。
 などと思う事が次第に糾《もつ》れて、それなりけりに夢さ。

 大分永く眠っていたと見え
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