《こころえぐさ》に、水さえあらば食物《しょくもつ》なくとも人は能《よ》く一週間以上|活《い》くべしとあった。又|餓死《うえじに》をした人の話が出ていたが、その人は水を飲でいたばかりに永く死切れなかったという。
それが如何《どう》した? 此上五六日生延びてそれが何《なに》になる? 味方は居ず、敵は遁《に》げた、近くに往来はなしとすれば、これは如何《どう》でも死ぬに極《きま》っている。三日で済む苦しみを一週間に引延すだけの事なら、寧《いっ》そ早く片付けた方が勝《まし》ではあるまいか? 隣のの側《そば》に銃もある、而も英吉利製《イギリスせい》の尤物《わざもの》と見える。一寸《ちょッと》手を延すだけの世話で、直ぐ埒《らち》が明く。皆打切らなかったと見えて、弾丸《たま》も其処に沢山転がっている。
さア、死ぬか――待ってみるか? 何を? 助かるのを? 死ぬのを? 敵が来て傷《て》を負ったおれの足の皮剥《かわはぎ》に懸るを待ってみるのか? それよりも寧《いっ》そ我手で一思《ひとおもい》に……
でないことさ、そう気を落したものでないことさ。活《いき》られるだけ活《いき》てみようじゃないか。何のこ
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