の暮らしなんぞには慣れておりませんの。それに、これははっきりお断りして置きますけれど、だれもあなたの御意見なんぞお願いしてはおりませんわ。」
 と言って、サゴ椰子はつんと黙ってしまいました。
「あたしのことを申しますとね」と、肉桂《にっけい》が口を出しました、「あたしは現在の境涯にまずまず満足ですわ。そりゃここは退屈といえば退屈ですけれど、その代わりだれにも皮をはがれずにすむことだけは、安心していられますもの。」
「とはおっしゃるがね、あっちどもは何もみんながみんな、皮を引っぱがれて来たわけでもありませんぜ」と、まるで木のようなかっこうをした大きなわらびが申しました、「そりゃもちろん、皆さんのうちには、こんな牢屋《ひとや》暮らしが極楽みたいに見える方《かた》も、たくさんおいででしょうね。何しろ自由の身だったといっても、みじめな暮らしをして来たんですからねえ。」
 すると肉桂は、皮をはがれた昔のことも忘れて、おこって言い合いを始めました。肉桂の肩をもつ草木もあれば、わらびの味方をする草木もあるというわけで、わいわいとたいへんなけんかになってしまいました。もし手足が動かせるのでしたら、きっ
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