、自分の道を切り開きますわ。私はこんな鉄格子《てつごうし》やガラスごしにではなく、じかに青空と太陽が見たいんです。――いいえ、見ないで置くもんですか!」
そういうとしゅろは、まるで翠《みどり》の小だかい峰のように、目の下にひろがっている温室仲間の林を傲然《ごうぜん》と見おろしました。仲間はだれひとりとして、彼女に言葉を返す勇気のあるものはなかった。ただサゴ椰子が隣りのそてつに向かって、小声でこう言っただけでした。
「まあ見ていましょうよ。お前さんのうぬぼれがいい加減でやまるように、その憎たらしい大頭のちょん切られるところを、ゆっくり拝見するとしましょうよ。本当に高慢ちきな女だわ!」
ほかの草木は黙っていましたが、心の中ではやはり、アッタレーアの横柄な言葉に腹をたてておりました。ただここに一本の小さな草があって、その草だけはしゅろの態度に腹もたてなければ、彼女のお談義に気を悪くしてもいませんでした。それは温室じゅうの草木のなかで一ばんみじめな、だれにも相手にされないような小さな草でありました。ひ弱な、色つやのないはい草で、厚ぼったいしなびた葉をつけていました。この草には別にこれといっ
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