ありませんでした。で、草木たちがてんでにおしゃべりをしている時、アッタレーアはいつも黙り込んで、空を慕っておりました。たといあの色あせた空の下でもいい、ちょいと表へ出てたたずむことができたらどんなにいいだろうと、そればかりを思っておりました。
「ねえ皆さん、どうでしょうね、もうじき水を掛けてもらえるんでしょうかしら?」と、水気の大好きなサゴ椰子《やし》が尋ねました、「あたくしもう、ほんとに今日は乾《ひ》あがってしまいそうですのよ。」
「いやあ、あんたの言われることには、ほとほと驚き入りますなあ、お隣りさん」と、太鼓腹のサボテンが申しました、「毎日あんなにどっさり水を掛けてもらっている癖に、それでもまだ不足だと言うんですかね? まあこの私をご覧なさい。私はほんのわずかの水分しかちょうだいしちゃいませんがね、でもご覧のとおりつやつやと、みずみずしておりますよ。」
「あたくしどもはあんまりつましい暮らしには慣れとりませんのでねえ」と、サゴ椰子は答えました、「あたくしどもはどこやらのサボテンさんみたいに、からからにかわいたみすぼらしい地面じゃ、育たないんでございますよ。あたくしどもは、かつがつの暮らしなんぞには慣れておりませんの。それに、これははっきりお断りして置きますけれど、だれもあなたの御意見なんぞお願いしてはおりませんわ。」
と言って、サゴ椰子はつんと黙ってしまいました。
「あたしのことを申しますとね」と、肉桂《にっけい》が口を出しました、「あたしは現在の境涯にまずまず満足ですわ。そりゃここは退屈といえば退屈ですけれど、その代わりだれにも皮をはがれずにすむことだけは、安心していられますもの。」
「とはおっしゃるがね、あっちどもは何もみんながみんな、皮を引っぱがれて来たわけでもありませんぜ」と、まるで木のようなかっこうをした大きなわらびが申しました、「そりゃもちろん、皆さんのうちには、こんな牢屋《ひとや》暮らしが極楽みたいに見える方《かた》も、たくさんおいででしょうね。何しろ自由の身だったといっても、みじめな暮らしをして来たんですからねえ。」
すると肉桂は、皮をはがれた昔のことも忘れて、おこって言い合いを始めました。肉桂の肩をもつ草木もあれば、わらびの味方をする草木もあるというわけで、わいわいとたいへんなけんかになってしまいました。もし手足が動かせるのでしたら、きっ
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