となぐりあいになったに相違ありません。
「なんだってけんかなんかなさるの、皆さん」とアッタレーアが申しました、「それで御自分たちの暮らしがよくなるとでもお思いですの? 角づきあいをしたり癇癪《かんしゃく》を起こしたりで、ただ御自分たちの不幸を増すだけの話じゃありませんか。けんかなんかはやめにして、大事なことをお考えなさるがいいですわ。まあ私のいうことを聞いてちょうだい。みなさんは、もっと高くもっと広く、ぐんぐんお伸びになるがいいわ。枝を伸ばして、あのわくやガラスを押しあげるんです。そうすればこの温室なんぞは木っぱみじんに消し飛んじまって、あたしたちは自由の天地へ出られるというものですわ。一本やそこらの枝で突っぱって見たところで、ちょきんと切られてしまうのが落ちでしょうけど、百本もの力づよい勇ましい幹が、総がかりで突っぱったとしたらどうでしょう? もっと気を合わせて働きさえすれば、勝利はあたしたちのものですわ。」
はじめのうちはだれひとり、しゅろに異議を申し立てるものはありませんでした。みんな黙り込んで、何と挨拶《あいさつ》したものか迷っていたのです。やがてサゴ椰子が覚悟のほぞを決めて、
「そんなのばかげきった話だわ」と、言い放ちました。
「ばかげた話だ! ばからしい話だわ!」と草木はてんでにがやがや言い出して、アッタレーアの提案なんぞ愚にもつかない寝言だということを、われがちに証明しようとかかるのでした。――「とんでもない空想だ!」と草木は叫ぶのでした、「ばかばかしい! 夢みたいな話だ! 鉄わくはがんじょうなんだ。あれをこわそうなんて、とてもできるもんじゃない。それにまたこわせたところでいったい何になる? 人間たちがはさみやおのを持ってやって来て、枝をちょん切ってしまうだろう。わくの破れ目はふさいでしまって、また元のもくあみになっちまうだろう。いや、せっかくちゃんとついている手足を、むざむざちょん切られるだけ損だよ……。」
「じゃ、好きになさるがいいわ!」とアッタレーアは答えました、「こうなったらもう、私にも覚悟があります。あなたがたにはまあかまわずそっとして置きましょうよ。どうなりと好きに暮らしなさるがいいわ。愚痴をこぼし合ったり、水のくれ方が多いとか少ないとかでけんかをしたり、まあいつまでもそうしてこのガラスぶたの下に居残ってなさるがいいわ。私はたとい一人でも
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