をなさしめることができる。すなわちこれを短くいいますれば、著述をするということ[#「著述をするということ」に傍点]と学生を教えるということ[#「学生を教えるということ」に傍点]であります。著述をすることと教育のことと二つをここで論じたい。しかしだいぶ時がかかりますからただその第一すなわち思想を遺すということについて私の文学的観察をお話ししたいと思います。すなわちわれわれの思想を遺すには今の青年にわれわれの志を注いでゆくも一つの方法でございますけれども、しかしながら思想そのものだけを遺してゆくには文学によるほかない。それで文学という烽フの要はまったくそこにあると思います。文学というものはわれわれの心に常に抱いているところの思想を後世に伝える道具に相違ない。それが文学の実用だと思います。それで思想の遺物というものの大なることはわれわれは誰もよく知っていることであります。思想のこの世の中に実行されたものが事業です。われわれがこの世の中で実行することができないからして、種子《たね》だけを播《ま》いて逝こう、「われは恨みを抱いて、慷慨《こうがい》を抱いて地下に下らんとすれども、汝らわれの後に来る
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