れなかったのであります。ここにおいて大問題は釈《と》けました。ユトランドの荒野に始めて緑の野を見ることができました。緑は希望の色であります。ダルガスの希望、デンマークの希望、その民二百五十万の希望は実際に現われました。
 しかし問題はいまだ全《まった》く釈けませんでした。緑の野[#「野」に白丸傍点]はできましたが、緑の林[#「林」に白丸傍点]はできませんでした。ユトランドの荒地より建築用の木材をも伐り得んとのダルガスの野心的欲望は事実となりて現われませんでした。樅《もみ》はある程度まで成長して、それで成長を止めました、その枯死《かれること》はアルプス産の小樅《こもみ》の併植《へいしょく》をもって防《ふせ》ぎ得ましたけれども、その永久の成長はこれによって成就《とげ》られませんでした。「ダルガスよ、汝の預言せし材木を与えよ」といいてデンマークの農夫らは彼に迫りました。あたかもエジプトより遁《のが》れ出でしイスラエルの民が一部の失敗のゆえをもってモーセを責めたと同然でありました。しかし神はモーセの祈願《ねがい》を聴きたまいしがごとくにダルガスの心の叫びをも聴きたまいました。黙示は今度は彼に臨
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