、ローズ・ブノワさんはすっかり考《かんが》え込《こ》んでしまいます。ジャンセエニュ先生《せんせい》のところに八つ残《のこ》っているということはわかっていますが、それが八つの帽子《ぼうし》か、八つのハンケチか、それとも、八つの林檎《りんご》か、八つのペンかということがわからないのです。もうずいぶん前《まえ》から、そこのところがわからないで頭《あたま》を悩《なや》ましていたのでした。六の六|倍《ばい》は三十六だといわれても、それは三十六の椅子《いす》なのか、三十六の胡桃《くるみ》なのかわからないのです。ですから、算術《さんじゅつ》はちっともわかりません。
反対《はんたい》に、聖書《せいしょ》のお話は大変《たいへん》よく知っています。ジャンセエニュ先生《せんせい》の生徒《せいと》のうちでも、地上《ちじょう》の楽園《らくえん》とノアの方舟《はこぶね》の事《こと》をローズ・ブノワさんのように上手《じょうず》にお話しできる生徒《せいと》は一人もいません。ローズ・ブノワさんは、その楽園《らくえん》にある花の名前《なまえ》を全部《ぜんぶ》と、その方舟《はこぶね》に乗《の》っていた獣《けもの》の名前を
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