鳥《とり》や獣《けもの》のいうことがわかるのです。相手《あいて》の気持《きもち》をのみ込《こ》むのには、お互《たがい》に仲《なか》よくし合うことが何《なに》よりです。
 今日《きょう》も、ローズ・ブノワさんは読方《よみかた》で習《なら》ったところをちっとも間違《まちが》えずに諳誦《あんしょう》しました。それで、いいお点《てん》をいただきました。エムリーヌ・カペルさんも、算術《さんじゅつ》の時間《じかん》がよく出来《でき》たので、いいお点《てん》をいただきました。
 学校から帰《かえ》って来《く》ると、エムリーヌ・カペルさんは、いいお点《てん》をいただいたということをお母さんにお話《はな》ししました。それから、その後《あと》でこういいました――
「いいお点《てん》って、なんの役《やく》に立《た》つの、ねえ、お母《かあ》さん?」
「いいお点っていうものはね、なんの役《やく》にも立《た》たないんですよ。」と、エムリーヌのお母《かあ》さんはお答《こた》えになりました。「それだからかえって、いただいて自慢《じまん》になるのです。そのうちに、あなたもわかってきますよ。いちばん尊《とうと》い御褒美《ごほうび》っていうのは、名誉《めいよ》にだけなって、別《べつ》に得《とく》にはならないような御褒美《ごほうび》です。」

   大きいものの過《あやま》ち

 道《みち》というものは川《かわ》によく似《に》ています。それは、川《かわ》というものがもともと道《みち》だからです。つまり、川というのは自然《しぜん》に出来《でき》た道で、人は七|里《り》ひと跳《と》びの靴《くつ》をはいてそこを歩き廻《まわ》るのです。七|里《り》ひと跳《と》びの靴《くつ》というのは船《ふね》のことです。だって、船《ふね》のことをいうのにこれよりいい名前《なまえ》がありますか? ですから、道《みち》というのは、人間《にんげん》が人間のためにこしらえた川のようなものです。
 道《みち》は、川の表面《ひょうめん》のように平《たいら》で、綺麗《きれい》で、車《くるま》の輪《わ》や靴《くつ》の底《そこ》をしっかりと、しかし気持《きもち》よく支《ささ》えてくれます。これはわたしたちのお祖父様方《じいさまがた》が作《つく》って下《くだ》さったものの中《なか》でもいちばん立派《りっぱ》なものです。このお祖父様方《じいさまがた》
前へ 次へ
全9ページ中5ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
フランス アナトール の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング