《でき》るだけ彼女の話しっ振《ぷ》りをそのまま伝《つた》えることにしよう。これがまた素敵《すてき》なのである。
学校
誰《だれ》がなんといっても、ジャンセエニュ先生《せんせい》の学校《がっこう》は、世界中《せかいじゅう》にある女の子の学校《がっこう》のうちで一番いい学校《がっこう》です。そうじゃないなんて思《おも》ったり、いったりする者《もの》があったら、それこそ神様を敬《うやま》わないで、人の悪口《わるくち》をいう人だといってやります。ジャンセエニュ先生《せんせい》の生徒《せいと》はみんなおとなしくて、勉強家《べんきょうか》です。ですから、この小さな人たちがじっとお行儀《ぎょうぎ》よくしているところは、見ていてこんないい気持《きもち》のことはありません。ちょうど、それだけの数《すう》の小さな壜《びん》が並《なら》んでいるようで、ジャンセエニュ先生《せんせい》は、その壜《びん》の一つ一つへ学問という葡萄酒《ぶどうしゅ》をつぎ込《こ》んでいらっしゃるのだという気《き》がします。
ジャンセエニュ先生《せんせい》は高い椅子《いす》に姿勢《しせい》を真直《まっすぐ》にして腰掛《こしか》けていらっしゃいます。厳格《げんかく》ですけれど、優《やさ》しい先生《せんせい》です。髪《かみ》はひっつめに結《ゆ》って、黒《くろ》の肩《かた》マントをしていらっしゃる、もうそれだけで、先生《せんせい》を敬《うやま》う気持《きもち》がおこると一しょに、先生《せんせい》がどことなく好《す》きになるのです。
ジャンセエニュ先生《せんせい》は、なんでもよくお出来《でき》になるのですが、この小さな生徒《せいと》たちに先《ま》ず計算《けいさん》の仕方《しかた》をお教《おし》えになります。先生《せんせい》はローズ・ブノワさんにこうおっしゃいます。
[#挿絵(fig46819_02.png)入る]
「ローズ・ブノワさん、十二から四つ引《ひ》いたら、幾《いく》つ残《のこ》りますか。」
「四つ。」と、ローズ・ブノワさんは答《こた》えます。
ジャンセエニュ先生《せんせい》はこの答《こたえ》ではお気《き》に入《い》りません。
「じゃ、あなたは、エムリーヌ・カペルさん、十二から四つ引《ひ》いたら、幾《いく》つ残《のこ》りますか。」
「八つ。」と、エムリーヌ・カペルさんは答《こた》えます。
そこで
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