いる額と、眼のふちに眼張りをしているのだけが見えるのでした。
それらの人びとは少しの音もさせずに自分たちの席につきましたが、その動いている時、鋪石《しきいし》の上に靴の音もなければ衣《きぬ》ずれの音もないのです。低い所には、鳶《とび》色のジャケツに木綿《デイミン》の袖をつけて、青い靴下をはいている若い芸術家たちの群れが、顔を薄くあからめて伏目がちな娘たちの腰に腕をまいて親しそうに押し合っています。また、聖水《ホリーウォーター》の近くには、真紅《しんく》の袴《ペティコート》をはいて、レースのついている胸衣《むなぎ》をつけた農家の女たちが、家畜のように動かずに地面に腰をおろしています。そうかと思うと、若い者がその女たちのうしろに立って大きな眼をして見廻しながら、指先でくるくると帽子を廻したりしています。これらの悲しそうな顔つきの人たちは、何か同じ思いのために、動かずにここに集まっているようで、ある時は愉しそうに、またある時は悲しそうにみえるのでした。
カトリーヌはいつもの席についていると、司祭は二人の役僧をしたがえて、聖餐の壇にのぼるのを見ました。どの僧もみな婆さんの識らない人ばかりで
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