、路《みち》にころがっている石も一つ一つはっきりと見えて、眼をつぶったままでも教会へゆく道は立派に分かったといいます。そこで、ノンスの道とパロアスの道の角まで、わけもなしにたどって来ると、そこには、おもおもしい梁《はり》に系統木(クリストの系図を装飾的に現わしたもの)の彫ってある木造の家が建っていました。
 ここまで来ると、カトリーヌは教会の扉があいていて、たくさんの大きい蝋(燭の灯)が洩れているのを見たのです。歩いて教会の門を通ると、自分はもう教会のうちにいっぱいになっている会衆の中にはいっていました。礼拝者の人たちは見えなかったのですが、そこに集まっているのはいずれも天鵞絨《ビロード》や紋織りの衣服を着て、羽根毛《はねげ》のついている帽子をかぶって、むかしふうの佩剣《はいけん》をつけている人びとばかりであるのに驚かされました。そこには握りが黄金《おうごん》で出来ている長い杖をついている紳士もいます。レースの帽子をコロネット型の櫛で留めている婦人たちもいます。聖ルイスふうをした騎士たちは婦人たちに手を差しのべていると、相手の婦人たちは隈取りをした顔を扇にかくしていて、ただ白粉のついて
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