なたに仇をする二人の巨人であればよいと思ふ。寡人は即座に其頸を※[#「てへん+丑」、第4水準2−12−93]切つて御眼にかけたい。』
かう云ひながら、王は力任せに両手で褥を掴んだ。柔な布が音を立てて裂けると、雪のやうに白い羽毛が中から雲の如く飛び立つた。小さな羽が一つしばらく空にたゆたひながら、女王の胸の上に落ちた。
『バルタザアル陛下。陛下は何故巨人を殺さうと御意遊ばしますの』顔を赤めながら、バルキスが云つた。
『寡人はあなたを愛してゐるからです。』
『陛下のお出でになる市の井戸にはよい水がございますか。お教へ下さいましな。』
『左様』バルタザアルは少し驚いた。
『わたくしは、それから、エチオピアではどうして果物の砂糖漬を拵へるのだか知りたくて仕方がございませんの。』
王は何と答へていいかわからない。
『ようお教へ下さいましよ。よう』と女王はせがむのである。
そこで王は畢生《ひつせい》の記憶力を絞つて、エチオピアの料理人が榲※[#「木+孛」、第3水準1−85−67]《マルメロ》を蜜の中へ入れて貯へる方法を叙述しようとした。ところが女王は、碌々聞きもしないで又急に話をかへた。
『
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