つの道しかないんですよ、ダラ幹のいない、一番闘争的な組合に入って、団結して闘うより仕方がない……」
「誰に教わったんだッ生意気なッ。」
兄の手先は、怒りの為に細かく慄えていた。
「私たちの方には、全協一般使用人組合がある。兄さんの方にも出版労働って組合がある。組合は闘争的な加入者のある処だったら、百貨店だって何処だって、職場、職場へどしどし組織の手を伸ばします……」
みを子はポッと頬を染めて、何時までも喋りつづけようとした。暫く彼女の雄弁はつづいた。
その間兄は、額とすれすれにおろした電燈の笠の下で、顳※[#「※」は「需+頁」、第3水準1−94−6、248−19]《こめかみ》をぴくぴくさせて、泣き出しそうな表情をしていたが、
「みを子――」
矛盾に堪えられなくなるといつもいうように、彼はまたそれをいった。
「俺がお前のようなことをやって、馘にでもなって見ろ、この生活は誰が背負うんだ。」
母親は、はらはらして、いい争う兄妹を見ていた。
みを子が何時の間にそんな理窟をいう娘になったかと思って、まだ子供っぽい肩のあたりを見ていると、不思議と娘のいうことが解った。しかしまた病身で勤
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