っぼい大きい眼を輝して、
「ええ、南葛にこの間まで――でも今度他の地区に変わったんですよ。」
「そして、あれから始終あなたの処へ、何かたよりがありますでしょうか?」
「ええ、ここの仕事が忙しいんで滅多には会えないんですけれど、そりゃ始終ことづけはあるんです。」
「――此処の仕事というと?」
まさ子は眼をぐりッと動かした。[#底本では、この行頭の1字下げなし]
「救援会の事務です!」
「それでは、あの、此処が――」
彼女は娘から救援会の話をきいていた。
――無産者解放運動の犠牲者や、その家族の救援運動をするために、白テロと戦いながら公然と看板を出して、あくまで犠牲者の便宜に備えている処だ。それは丁度、暗い海の燈台のような役目をするんだ………と。
そうと知って、彼女はまた新しく室内を見廻した。
「あの本は、みんな牢から戻って来た本なんですね?」
「ええ一通りもう、市ヶ谷も豊多摩も廻って来ました。」
「これは何です? これはッ?」
彼女は珍らしそうに、卓子の上のカードを指してきいた。
「これですか? これは犠牲者の姓名と、差入れ、その他のことを記入するカードです。」
――この中に
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