命ずる所に従って説教しておくが、近頃|閑《ひま》になったせいか何かしら説教めいたことを口走る癖がついたのに自ら呆れている。まるでインキョの如く! お母さんはどうしてるかね。おばあさん[#底本では「あばあさん」と誤記]は眼鏡がガタつく程やせてしまったと云う話だがどうなんだ。
終わりに臨んで余り喧嘩をしないことを勧告しておく。必要な喧嘩ならどうしてもしなければならないし、又、気を強く持つことは今の君には絶対必要なのだが、しかし君は軍鶏《しゃも》ではなくて、俺のオカミさんなんだからな。
7
まるで君が写真をうつす時のように少しスマシて書いたらしい手紙を受け取った。それによると、尊敬すべき俺のオカミさんは、「四日間の労働体験」を誇って(誇ってるわけでもないだろうが)いるようだ。勿論それは立派な体験には異《ちが》いない。その点には異議はないが、「体験」も四日間位だと、それは却って「如何に体験が少ないか」と云うことの証明として、より多く役立ちはしないかね。だが、今はもう四日間を十倍した以上の体験を得ている筈だし、俺が出る頃には、それこそまるっきりプロレタリヤになっていることだ
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