ルクス主義者がいる。それ等の人々は現実に対する真面目な興味の欠けてることを示している。(大山郁夫がそれだったように)君はそんな風なマルクス主義者になってはならないし、又如何に上手に組み立てられていても、そうした事実を知らない人に対しては、その議論を絶対に信用してはならないのだ。
まだ書きたいことがあるが書けなくなってしまった。宅下げしたのはドンキホーテ二冊、それから郵便で着物を送った。あのシーツの黒くなったことには、近来急速にプロレタリヤ化しつつある君も流石《さすが》に驚くだろう。今「西部戦線」を読んでいる。それからドイツ語の文法、君の送ってくれた奴をもう一度差し入れしてくれないか。然し手許《てもと》になければいいんだよ。では又。馬鹿に急いだので何も書けなかった。
3
此の間は思いがけない人にも逢ったし大変愉快だった。「理論的には大分しっかりして来たつもり」の人よ! 君は非常に丈夫そうに見えた。そう見えるだけではなくて本当に丈夫になったのだろう。処で宅下げの本はこの手紙が君の手許へ届くまでには三冊になる。前便で着物のことを書いておいたが二三日何だか寒いので見合わせているのだ。そのうち郵便でKの処へでも送ることにしよう。君達に余り面倒な思いをさせるのも気の毒だから。読書に関するプランは中止したよ。だが、心理学の本を読む前提として、解剖、組織、生理学に関するものを読みたい。急ぐわけではないから、何処からか見つけて来てくれ給え。
俺のドイツ語も近頃では君の理論のように、「大分しっかりして来たつもり」だよ。文法的にもそれからまた単語についても。K夫人は病気ではないのかね。そんな気がする。逢ったらよろしくいってくれ給え。K夫人の亭主にもたまには手紙をよこせと云ってくれ給え。
4
幾分かキートンに似ているというオカミさん! 忙しいですね。相変わらず。兎に角君に「公休日」があるようになったのは劃時代的だよ。以前は毎日公休日だったのに! 此の間送った着物、それから宅下げした本(ドイツ文典、西部戦線)は受け取ってくれたかね。計画的な読書については暫く前に書いたように、もう止めたんだよ。僕はヒマだからいくらでも綿密なプランを立てるし、また立てたくもあるのだが、君は多忙であるし、俺の親類の連中から寄附を募集することも君にはもういいかげん沢山だろ
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