いけない。戦闘的な労働者を見る眼をもってKを見ればもう、全然問題にはならない。だが[#底本では「だか」と誤植]兎に角彼は左翼運動に興味を持っている心掛けのよい紳士なのだ。ポケットに資本論を突っ込んで銀座をブラついて歩いたって咎めるわけにはいかない。Hについては問題にする方が間違っている。彼等にはそのつもりで交際してゆき給え。「宅下げ」は厨川白村二冊、「ドイツ語動詞変化表」の一冊。洗濯の事は心配しなくてもいいよ。監獄に来てまで毎日、「洗いたてのシャツ」をという約束の実行を迫る程俺も贅沢ではない。先月一日に城東道子という人が差し入れてくれた。僕にも見当がつくが、君が知っていたらよろしくいってくれ。
俺のようにロクな仕事もしないでトッ捕まって不生産的な別荘生活をしているものにも、外の諸君が色々心配していてくれてることを思うと、赤面しないわけにはいかない。Aがまるで、シンボリストのような手紙をくれた。はっきり意味は解らないが、都会の騒音と歴史の機関車の驀進する轟音とを感じる事ができた。新しい革命的現実的象徴主義の芸術が、こんな処から発生しやしないか等と、馬鹿なことを考えた。――誰かホイットマンの詩集か、ヴェルハーレンの「触手ある都会」を持っていないか。字引き受け取った。有り難う。アドが変わるようだったら面会で知らせてくれ。
2
先週中に四月九日から五月二日までの手紙が連日のようにやって来た。しかも君が投函するのとは反対の順序で、つまり一番古い四月九日のが最近に手に入った。だから返事したいことも沢山あるのだが、一々書いていられない。残念ながら何時ものように出てから緩《ゆ》っくり話してやろうと思って我慢するより仕方がない。マジョール湖の絵葉書は、表も裏も面白かった。またあんな絵葉書にそしてあんな報告を書いたのをくれ給え。
僕が君に忠告したいことは君が本ばかりでなく、「事実」に注意して欲しいということだ。例えば市電の争議についても、電柱のビラを見て感激している奴はいても、その「要求」について真面目に研究をしている奴は割に少ない。ヒドイのになると、市電の職場が運輸とか、車庫とか、被服工場とか色々に分かれていて、それぞれの問題があることすら知らない奴がいる。総同盟や組合同盟にどんな組合が所属しているか(つまり***の***でも知ってるようなことすら)知らないマ
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