、男のお友達も出来たりして、一時私は全く虚栄を夢見て、軽佻浮薄な日を送りましたね。
けれどもその後幾変遷、私という女は又当時の人と変わりました。
要するに、新聞記者雑誌記者は、幾ら文明になって来たと云っても、今の日本では婦人に困難な仕事で御座いますね。第一服装からして不便な事はお話になりません。米国あたりは知らぬ事、いまの日本の社会は幾十年、婦人が新聞界で奮闘して見たところで、苦しい経験を山のように積んだ処で、相当の地位を与えてくれる見込みは到底ありません。
私の初めの大理想は何処へやら消滅して、元気なく丁度、一旦泥水に浸みた女が、足を洗えずにもがいているようなもので、矢ッ張り相変わらずの日を過ごして居ります。
それでも『婦人は実力以上に買われる』という余徳あるが為で御座いましょう。
然し実力以上に買われるとは、何たる侮辱された言葉でしょう。決してそれを潔しとは致しませぬ。
要するに婦人の職業と云うことは、まだまだ範囲が狭いのみならず、殊に筆を持って立とうとなさる方は、なお更生活の途の苦しいと云うことを覚悟して、陣頭に立たれたいと思います。
注:(1)桜井女学校長
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